一夜明けて
公開日:
:
最終更新日:2014/05/14
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コンコン、とノックが終わるや
「いるんだろ?オレだよ、ツヨシ。開けろよ。」
と、できるだけ本人にしか聞こえない程度の声で呼ぶと、11、2秒経ったぐらいにチェーンを外す音がした。続けてカチャッとドアが開くと、うつむいたままのツヨシがノブを引いていた。
「木村くん・・・・・」と聞き取れないほどのか細い言葉が言い終わらないうちに
「さっさと入れろよ、まったく」と、木村はヅカヅカと部屋に入った。
ソファーに座った木村を直視できないツヨシは、それでもなんとか搾り出して
「あ・・あの、木村くん・・・」木村は再び言葉をさえぎるかのように
「どうせ飲み物出す余裕もないだろうから買ってきたよ、アルコールじゃねーけど。」
ジャケットのポケットから缶コーヒーを2本取り出し、そのうち1本をツヨシに投げた。
数秒の沈黙の後、少しだけ荒げた声で木村が言った。
「ナニ考えてんだよ、オマエ」
ツヨシは木村の言葉を予想できていたが
「・・・ゴメン。」と言うのがやっとだった。
今度は数十秒の沈黙が続いた。木村は少しトーンを抑えて
「いつかやるだろって、シンゴは言ってたけどな。」と少々あきれた目線で呟き気味に言う。
ツヨシは玄関とリビングの境界にある柱と平行な立ち位置から一歩も動けないまま、ただ黙ってうつむいていたが、一気にこみ上げてきたのか、足元のフローリングに一粒、二粒と、涙を落とし始め、同時にヒック、ヒックと嗚咽を響かせ始めた。
しばらく黙って聞いていた木村は、
「親にも居留守使ったのかよ。心配してる方の事も考えろよ。」と言いながら立ち上がり、ツヨシの前に進むと、肩に手を回してソファーへ誘導した。
嗚咽が静まり、数分の沈黙の後、ツヨシは少し落ち着いた声で
「ホントにゴメンなさい。みんなにも迷惑かけちっゃて・・・」
ソファーに並んで腰掛けていた木村は、
「オレ達はいいんだよ、別に。どーにでもなる。オマエのこれからが大事だからな。」
と缶コーヒーの最後の一口を飲み干し、ポケットからタバコを取り出した。
シャキンとジッポーの火でタバコに火をつけ、空缶を灰皿代わりにしたところで、低いトーンでツヨシが言った。
「ボクはもういいんだ、戻りたくない。もうイヤなんだ、あの社長!」
「ツヨシ・・・」
「木村くんはいいよ。ボクはいまだに呼ばれるんだ、あの人の所に。」
続く
本日の出演 草村ツヨシ、木村卓三
完全にフィクションですので。
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