方言アカデミー
公開日:
:
最終更新日:2014/04/09
都城愛
正直いうと、僕はあまり島津関係に興味がない、というか薄い。なぜなら邪馬台国の方がはるかにロマンがあるし、観光資源としての価値観も可能性も何百倍 もあるからだ。もし、都城市が邪馬台国だったら、それは日本だけでなく世界的な観光スポットになるし、世界中の歴史の教科書を塗り替えるだけでなく、海や 観光資源のない都城市民にとって、それは生活そのものを変える事件になるからだ。
でも、ここのところ方言についてあれこれ調べていると、どうしても避けて通れないのが都城初代領主、北郷氏(都城島津家)なのだ。
元々、初代当主、北郷資忠が足利氏より与えられたのは山田町の薩摩迫という所で、ウチのすぐ近くなのだ。実は最近、安田哲也という方が「解読・邪馬台国の暗号」という本を出されており、氏はこの中で邪馬台国を「山田町」としているのだ。
どうにも島津を無視できなくなった、ちゅーわけです。
さ、今日も勉強していきもそかいな。本日はまず研修生takashiくんのテーマからです。
>鹿児島の言葉は隠密探しの為に出来たと聞いた事があります。
>お師匠ご存じないですか?
来ちゃったなぁ・・・、いつか来ると思ったんだよなぁ・・・。いやー、このハナシはですね、いわゆるスパイ論議に発展するんですよねぇ。
これは、徳川方の隠密によって機密情報を盗まれるのを防ぐ為、薩摩藩では日本語に近い新たな人工言語を作り、それを藩内で通用させ、隠密を欺こうとした、ということなんですけど・・・。
そもそも薩摩藩主の島津氏は、豊臣VS徳川の関ヶ原の戦いで豊臣側だった為、必然的に外様大名になったので、幕府との関係は最初からいいものではなかっ たんですな。やがて外交問題で対立が浮上して、「倒幕」を考える一派が出てくるわけですが、それが薩長同盟なわけです。薩長同盟はいわずとしれた長州(現 在の山口県)と薩摩(現在の鹿児島県と都城市)の連合ですが、倒幕は一種のクーデターですから、情報収集は最も大事な仕事だったのは言うまでもないです な。
情報収集といえば、アメリカのCIAやイギリスのMI6、ロシアのKGBやイスラエルのモサドなどのいわゆる「諜報機関」の仕事で、幕末に各藩主が諜報 部隊を持っていたのは、ある意味当然だったかもしれませんね。俗に「隠密」と言われる仕事は南北朝時代から始まり、江戸幕府の頃には総勢240名ほどが従 事していたようですね。有名なのはハットリくんなどのキャラクターでアニメ化もされている「伊賀」、そしてサスケなどの「甲賀」がありますが、それ以外に も70前後の流派があったようですな。
さて、問題の鹿児島弁ですが、倒幕直前の薩摩藩が情報漏えいを心配していたのは間違いないでしょうが、当時で約85万人の人間に対して、果たしてそんなことが可能なのか?という物理的な疑問が残ります。
例えば冷戦時のCIAが、全世界に散らばった2~3万人のエージェントに対して行う教育とはワケが違うんですよね。
じゃあ武士だけなら可能か、と言っても薩摩藩の士農比率は異常で4割近い人が武士でしたし、後世に伝わる方言はやはり庶民が伝播するわけですから、やはり不可能ではないか、と思うんですよね。
一説には、外様だった薩摩藩の役人が中央の人間と話すときに、「お宅はなんでそんなに言葉がキツいのか」と聞かれ、「わざとでごわす」と強がりを言った、というハナシもあり、どちらかというとこちらの方が信憑性は高いですかねぇ・・・。
さて続きまして研修生むじ子くんのレポートから。
>最近私が習得した都城弁が「食べる」という意味の「たもる」
>「たもる」は「○○してたもれ~」っていう高貴な言葉から来てるのかなぁって思ってたんですけど、
>どう考えても「たもれ」に食べるという意味は含まれてない・・・。
>っつーことはきっとどっかで変化したと思われ。そこで思いついたのが「はむ(食む)」の変化系じゃなかろうかと・・・。
「食べる」を「たもる」というのはやはり薩摩独自ですが、その語源は諸説あるようです。むじ子くんが言っているように「給う」からの派生説も当然あるの ですが、決定的な説はまだないようですね。信憑性として高いのは、「食べる」の語源が「賜わる(タマワル)」である説。つまり、「神の賜り物」という考え 方で、食べ物は神様に頂いた物であるとして、「~をたまわる」と使っていたというもの。
ちなみに、「はむ(食む)」というのは、動物(主に家畜や害虫)が食事する場合や、爪を噛んだり、身内間のいざこざ時に使われたりと、ダークなイメージに使われている言葉なので、少し考えにくいかな、と。
そこで、僕が独自に推測するのは、「田部(たべ)」説です。大和王朝時代、朝廷に献上する作物を作る人たちを「田部」と呼び、全国に直轄地がありまし た。実は都城市にも大規模な田部があり、今も地名として残っています。場所は現在の中郷地区豊満の近くで、このあたりは謎の伝説が多数残っているところで す。
そもそも「田部」という表現が「田んぼの部分」から来たのか、それとも「食べる」からなのかは定かでないですが、「田部」が作った作物を朝廷の人が「給 う」時に、「たべたもれ」と言ったのではないか、と。そしてそれが現在の「たもれ」に変化していったのではないかと思うんですな。
それなら「食べたもれ」じゃないのか?という意見がありそうですが、実は「食べる」という表現は、日本書紀や古事記以前にはなく、ほとんど「食(く) う」「食(く)らう」しかなかったようなんです。つまり、「食べる」自体が「田部」から来ている可能性があると思われます。
さて、今回はむじ子くんのレポート、非常に前向きで素晴らしかったですね。「わいおい方言アカデミー」から優秀バッジを進呈します。
いやぁ、どうにも長文になってしまって、ボクが読むほうだったらウザいかなぁ、とも思うんですが、探求心が止まらないですな。
都城も三股も、図書館が閉鎖中でして、調べ物ができないんすよね。今の梅雨時期はワリと時間があるので行きたいんだけどなぁ・・・。
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Comment
おかしむじ子@pray for Japan
2010/06/29 08:49
バッジ頂きました^^
なるほど~、賜る説、食べ物は神様から頂いたんだよって、食育に使えそうですねぇ。もちろん一説として。
「田部」は初めて聞きました。
>このあたりは謎の伝説が・・・
これもなかなか興味深いですねぇ。
そっか、図書館はまだ閉鎖中なんですね・・・。
ウチのかぁちゃんが「まだ閉まってるんじゃろかい?」って言ってたもんで。
鉄板鍋の心喜(ちりとり鍋専門店)
2010/06/29 13:36
長文でも全く関係ないです。いつも楽しく授業を受けさせてもらっています(^^)
鉄板鍋の心喜(ちりとり鍋専門店)
2010/06/29 13:44
多分、こちらの方は、だれでも知っている事だと思いますが、北郷から、島津とどうして名前が変わったのですか?
yumi/takashi
2010/06/30 00:03
こんばんわ takashi です。
ありがとうございます
そうかぁ~確かに85万・・・
ぇぇ!85万人もいたんですか(汗)
徹底するのは難しそうですね^^;
>「わざとでごわす」と強がりを言った
こちらの方が信憑性高そうです^^;
狂咲 狂
2010/06/30 03:19
>むじ子くん、心喜くん、takashiくん
いやいや、なんだか方言分析と言うより、歴史探訪になってるような気もしますが、それはそれで。
今後ともよろしくです。