倫理のデフレ:2002年5月号掲載
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最終更新日:2014/05/14
霧島フォーラム「狂この頃」
さて、今月も東京シリーズである。西新宿にある柏木公園の桜は、異例のスピードで開花し、翌日の暴風雨で瞬く間に散ってしまった。まさに現代を象徴する出来事だった。新製品は発売日から値下げされ、翌月にはマイナーチェンジしている昨今、「デフレ」は何も物価だけではない。
かの飯島愛の「プラトニック・セックス」は予想をはるかに上回る販売部数を達成したが、彼女の言いたかったことは何か?不遇な環境で育った為に、今の自分があることの弁明か、それとも自分の生き方を正当化し、ややもするとカリスマ視される事への期待か、どちらにしても功を奏した形が販売部数に現れているのは間違いなかろう。
ということは、彼女の人生や生き方を「あり」ととらえた人間が少なからず増えたのは間違いない。貞操や親子の尊厳は、さらにその価値を失うことになっていく。たとえばA子さんに10人の男友達がいたとして、そのうち本命であるB男くんと残り9人の差別化を具体的に(精神的な部分以外で)表すとすれば、やはり性行為しかなかろう。がしかし、その差別化ができない、又は成されていないとすれば、何をもって具体的差別化を図るか、ということになる。つまり、それを「なりわい」としている人は勿論、私生活でそういう生き方を取り入れている人は、本命とそうでない人の区別を態度で表せないということになる。
これは、人と人のつながりの中で「信用」や「信頼」といった言葉が無力化していく典型的なパターンで、親子は勿論、夫婦・恋人・兄弟・友達・仲間・・・・と全ての関係を悪化、というか無意味化していくという図式だ。勿論全ての人がこーだ!というわけではなく、その比率が増えていくということである。
「人間社会の崩壊」と言っても、けして言い過ぎではないと思う。本来、法整備すべきでない「倫理」が、法によってコントロールされるという恐るべき時代が来るのかもしれない。つまり、「人の心を傷つけてはいけませんよ」という、当たり前の事すらも、法律で明記しなくてはいけなくなり、それに対して「なぜ?」と問いかける子供たちが増えていくという、まさに「心のデフレ」状態がやってくる!おーこわ。
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